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Column【コラム -琉球新報より 共に考える住宅デザイン-】

琉球新報より 共に考える住宅デザイン ― 金城 司

vol.002 条例の制限を活用する工夫
誰もが自分の住まいは快適でありたいと考えていると思う。
ましてや土地の購入をはじめ、住宅の設計をゼロからスタートし理想の住まいを考えている人にとってはより切実な願いではないではなかろうか。しかし、この切実な願いも、そう容易く手に入れる事は困難である。

住宅のような小規模な建築でさえも、解決しなければならない多種多様な現実があるからである。

家族の要望をまとめる事。建設費の限度額。土地の持つ絶対的広さやお隣さんとの離れ具合などの施主自身がある程度理解ししている制限内容をはじめ、建築面積や延床面積に居室の採光面積、天井高に通路幅に用途の制限など建築法規に係わる社会的制限など、後から知る建築制限の厳しさに戸惑う施主も意外と多い。

しかし、こんな複雑に絡みあった諸条件によって現状を把握し与えられた制限内容を理解する事で新たな建築展開やビジョンが生まれてくるものである。
1.2mの壁面後退を行い、スージ小のようなアプローチを確保した。 オレンジ色の扉が住宅玄関。
帰宅の際、ライトアップされた散策路(スージ小)を通って気持ちを切り替える。
「すき間」と「ス−ジ小」
隣地境界線から1m以上、道路境界線から2m以上の建築壁面のセットバック義務。この建築制限は限られた敷地の範囲を更に厳しく生活空間を制限し束縛するものと当初は考えられてた。しかし、この条件を上手く利用する事でこの住宅の特徴となり、更には施主の生活空間の一部へと取り込めないかと考えるようになった。

そんな中セットバック義務で壁面後退している周辺住宅の隙間と今でもこの町並みを特徴つけるスージ小(小路)の隙間が二重に重なりあって見えるようになっていた。建物や塀に挟まれながらも何処か懐かしく心地よい薄暗さを持つスージ小。スージ小のような隙間を住宅のアプローチへと導入する事で単なる隙間から「機能する隙間」へと変化できるのではないか考えるようになった。
隙間から散策路へと機能をもたせる
床を持ち上げるということは、沖縄のように雨量・湿度の多い地方では快適な住まいをつくる上で重要なことだと思う。

この提案をキッカケに様々な問題や機能的役割を検討して見ると他にも面白い効果を得る事が出来た。

道路から玄関までの長い小路は段差のないバリアフリーのスロープへと変化し、敷地の段差を緩やかに解決してくれた。

また家から職場へ出掛ける時や外から帰宅する際の気持ちの切り替えを行う大切な散策路にもなっていた。更に来客者に対してはヒンプン(障壁)のような心理的仕切りの効果もあり、昔の民家建築のようなに門扉を取り付けなくてもよいオープンなつくりとなった。

大きな制限も視点を変えて見ることで、全く違う解釈がうまれてくるように、何気ないちょっとした解釈で空間の在り方を変えてしまう、そんな建築をこれからも模索していきた。

その為にも、その場所の持つ場所性や地域性といった条件や法的条件等を上手く整理し、施主が住んでて楽しくなるような住宅を提案していきたいと考えている。


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