Jo Architecture & Design Office【門一級建築士事務所】

Home > column

Column【コラム -琉球新報より 共に考える住宅デザイン-】

琉球新報より 共に考える住宅デザイン ― 金城 司

vol.004 かすり模様の家
自分が生まれ育ち、成長してきた身近な地域社会の中に、自ら設計を手がけた住宅が、今年の4月のはじめに完成した。それも私の幼なじみの友人住宅で、建設された場所(南風原町)にしろ依頼者(幼なじみ)にしろ、意外と得られない恵まれた条件の中でこの住宅の設計がスタ−トした。

この計画に先立つ以前に南風原町で建てた「かすり模様の家」を施主に紹介した事が住宅を新築するキッカケとなった。かすり模様とはいえ、絣を模倣したデザインではない。「絣」という最もローカルで身近な南風原町の文化的イメ−ジを建築の空間構成の要素に織り込む事が計画のコンセプトなのである。

この単純なコンセプトが何故か何処となく互いに心地よかったと実感している。
身近な文化モチ−フを生活空間に織り込みたい。さりげなく、心地よい生活スタイル。理屈抜きのなにげない空間。そんな空間を、この住宅にも再度織り込みたいと思った。
コンクリート、塗装、スリガラス、リブ付金属板などの異種材料を建築の表情へ織り込む。
アルミの構成材をシルバーとブラックで織り込む。絣模様から得たイメージが建築の表情をつくりだす。
人・空間・情報を建築に織り込む
インターネット等の通信技術が進化する昨今、世界中の情報が無差別に飛び交い、最新の情報、最新の技術、最新のファッション、最新の生活スタイル等々、24時間好きなだけの情報が簡単に手に入るようになった。

刺激的で最新ではあるが、一時的消費の無限のスパイラルに居心地の良さを感じつつも、多少の違和感を感じる人は多いと思う。それは、情報が多様化し世界の情報が無限に広がる中で、自らのスタイルのない均一な空間によるものだと思う。

そんな中、個人的に体験した生活環境がなによりの心の拠所であり、理屈抜きの心地よい生活スタイルとなると考えている。無限に広がる情報空間が提供された今日、グローバルな視点とローカルな視点を対等な関係で捉え直す必要性を感じている。自らの足元を見つめ直す良きツールとして情報を活用していければと思う。
グローバルな視点とローカルな視点
和室の前テラスにチークの床柱を設置。内外の空間を曖昧に織り込む為のちょっとした工夫。

情報化社会のもたらした、影響力を安易に消費する事なく、過去・現在・未来のほつれ合った時間の糸を一本一本社会環境へ地道に織込む事が今後大切になると思う。

その為にも、全体を掌握するグローバルな視点と同時に伝統的でローカルな視点を取り巻く感性を大切にして行きたいと願っている。

建築の計画が一本一本の線の重なりで、内部と外部に見切りをつけ、秩序のある環境として整えるように細部にも関心を示しながら、日々演出する空間を設計していきたい。

建築の持つ空間の解釈をさまざまな視点から見つめ直す作業の重要性を、この設計を通して学んだ気がする。


vol.003 Column_Top vol.005