Jo Architecture & Design Office【門一級建築士事務所】

Home > column

Column【コラム -琉球新報より 共に考える住宅デザイン-】

琉球新報より 共に考える住宅デザイン ― 金城 司

vol.009 庇と縁側
人が自然と集まり何気ない会話が始まるような場。
ふと一人でボーっとしたいときに自然と足を運んでしまうような空間。月や雲をのんびりと背伸びし寝っころぎながら眺められるような場所。

そんな柔軟性にとむ空間や場を住宅建築に取り入れるたいと常日頃から思っている。
内にいながら外にいるような或いは外にいながら内にいるような、そんな内外の境界を意識する事なく生活シーンが連続的に展開していくような曖昧さをデザインしたいのである。
2階テラスの張り出しはアプローチ空間をさりげなく演出し住空間まで心地よく導く。
日差しをコントロールする庇。

曖昧な領域を楽しむ
曖昧な領域や中間的な場の設定。空間をルーズな関係で繋ぎ合わせる事でうまれる膨らみある空間。その場その時にあった生活シーンに柔軟に変化し対応する曖昧な領域が限られた生活空間を豊にしてくれるものと感じているからである。

特に沖縄のような気候条件を考えると自然と内外を繋ぎ合わせるような中間領域が恋しくなるものである。その中でも縁側や庇は大きな意味を持つ。

長く突き出た庇は縁側へと張り出し、深い影をもって沖縄の強烈な日差から住人を守りやさしい影とほどよい風を導いてくれる。梅雨時の蒸し暑い日には窓を開けておいても、深い庇が雨から住空間を守ってくれる。

さらに、通風も確保できるのである。突然の雨降りでもびくびくする事なく、縁側は雨や雨音を楽しませてくれるステージへと姿を変えるのである。庇と縁側をそっとプランに添えるだけで様々な生活シーンを演出してくれる。

沖縄の強烈な日差しと気まぐれな気象状況をコントロールする重要な機能を有しているだけではなく情緒的な感性を育む場所でもある。

また庇の出具合によって夏場と冬場の日差しをコントロールし一年を通じて快適な住空間を確保する為にも必要なものと考えられるのである。
雨や雨音も楽しめる空間
内でもあり外でもあるような曖昧な空間を庇と縁側は提供する。

沖縄の民家建築の特徴である雨端(アマハジ)の空間が過去から現代へと自然と抵抗なく受け継がれる経緯には沖縄という独特の地域性や場所性のもつ揺るぎない自然の流れが確固として存在しているからではなかろうか。

無理にデザインするのではなく謙虚に自然の流れの中から生まれてくる機能や空間をデザイン化していく過程こそが建築を模索する上で重要なものだと感じている。

自然から学び自然と闘いつつも共に生きてきた先人達。長い歴史の積み重ねから得た快適居住空間を謙虚に学び継承そして発展させる事が大切だと感じるのである。

どんなに建築技術や時代が変わろうとも人間が住む為の基本的に得られる快適さとは大きく変わるものではない。 「形」の継承ではなく我々祖先が如何にして歴史の試練に立ち向かい、その「形」をつくり出して来たか。

その背後にある心を謙虚に学びたいと思っている。


vol.008 Column_Top vol.010