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Column【コラム -琉球新報より 共に考える住宅デザイン-】
琉球新報より 共に考える住宅デザイン ― 金城 豊
vol.016 自由な住まい方
大屋根の赤瓦は日常生活を外部空間にも広げる庇をもつ |
特に二、三十坪という限られた現代の小住宅では、狭い空間を最大限に生かして住む人の生き方を反映した計画にすることである。そのためには、特定のデザインスタイルにこだわるのではなく、さまざまな角度から総合的に判断し、台所と食事室、食事室と居間、また台所、食事室と居間を一空間にまとめつつ緩やかに空間をつなげることだと実感している。
いわゆるダイニングキッチンとかダイニングリビングとかで呼ばれているものではあるが、これらは、現代的なプランとおもわれがちではあるが、我々先祖が暮らしてきた沖縄古来の間取りである開放性や可変性と比較すると内容的には同じことで、昔の人と今の現代人とではあまり変化していないと考えている。
住む人の個性や感性を引き出し、その人生そのものを築き上げていくことのできる住宅をデザインするべきである。
自然さと単純さ
庇のしたの外部空間、内外の緩衝地帯となる |
温暖で雨の多い沖縄では、テラスの上に長く張り出した庇をつけることが重要なことで便利な外部空間となるのである。光や風が空間の中で反映させるためには、人間と自然の間にある「境界」をデザインする事が大切なのである。
庭を建具の開放によって再び居室と一体化する事は、風通しの良い、しかも強い雨風や日射しから生活空間を守る緩衝空間となる。敷地全体が庭であり居住空間でもあるかのような室内外が曖昧な空間として連続させ、住宅のデザインとか間取りとかなど家全体の存在を意識する気持ちが無くなっていくような計画が良いデザインだと考えている。
自然と共に生きていく簡素さを尊ぶ心は、沖縄古来の自然観や住まい方の特徴の一つであると考えている。
心地いいすまい
建具の開け閉めによって自然を意識する |
機械や電子時代にもとずく環境のなかに、むかしの感覚をそのまま持ち込むことはできない。
けれども沖縄の先祖が残してきた建築の特徴や、また同じように自然をいかした家具や、自然をデザインしていく住まい方が脚光を浴びていることを考えると、文明が進めば進むほど、我々の祖先が持っていた自然さと簡素さに根ざす自然観を生活観を現代生活の中で生かすことこそ、現代のよりよい住まいをつくるひとつの考え方であると思っている。
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